【ご利用できます ご乗車できません】

 下記の仲間。

日本語アレコレの索引(日々増殖中)【18】

http://SNS.jp/view_diary.pl?id=1955992054&owner_id=5019671

SNS日記2017年08月07日から

 直接的には下記の続き。

【ご利用できます ご乗車できません】資料編

http://ameblo.jp/kuroracco/entry-12299488959.html

 まず資料編の用語に関して。

【資料3】に「漢語動作名詞」という言葉が出てくる。これは初めて見たかもしれない。正確な呼称はわからないが、よく使っている「熟語動詞」と呼ぶ。

【資料3】には「謙譲動詞」という言葉も出てくる。「可能動詞」はけっこう一般的だと思うが、謙譲動詞とか尊敬動詞はどうなんだろう。これは謙譲語の「特定形」(【資料2】 にも出てくる)のほう一般的だろう。

 さて、【資料1】には「ご利用できる」は出てこない。その理由はない。まあ、理由を書く必要もないだろうな。

【資料2】&【資料3】の論法はほぼ同じに見える。世間でも、こういう論法しか見ない。

「お/ご〜する」は謙譲語なので、それを可能形にした「お/ご〜できる」も謙譲語。

「明日には(私から)ご連絡できます」という使い方なら問題がない。しかし、「お客様がご利用できます」と言うのは、客の動作に謙譲形を用いているから誤用……まぁ、そのとおりだろう。

 当方の疑問の1つ目。

 そもそも「ご利用する」なんて言葉を使うことがあるのだろうか。当方には想起できない。「ご利用する」と言わないのなら、「ご利用できる」なんていうわけがないのでは。

 なぜ「ご利用する」と言わないか。『敬語再入門』の言葉を借りるなら「慣例」としか言いようがない。相手との関係性が云々で謙譲語を使わないという考え方もある。

 もしそれが本当なら、「利用させていただきます」(謙譲語I)も「利用いたします」(謙譲語II)も言えなくなるはず。どちらも「ご」はつきにくいだろう。理由は慣例以外に考えにくい。「利用させていただきます」の形は何かと評判が悪いけど、それはまた別の話だろう。「お/ご」がつきにくい動詞はほかにもいろいろある。この点に関しては後述する。

 仮になんらかの特殊な状況で「ご利用できる」と言ったとする。そのときは一般的な論理が当てはまるだろう(どんな特殊な状況なのかは知らない)。

『敬語再入門』は、もうひとつ別な考え方も解説している。

 ある動詞を尊敬語&可能形にする場合、先に「尊敬語」にしたうえで「可能形」にするものなんだとか。

 たとえば、「読む」と言う動詞を例にとると、尊敬語の「お読みになる」にした上で可能形にして「お読みになれる」になる。

 先に可能形の「読める」にした上で可能形にして「お読めになる」にするのは間違い。

 同様に、「利用する」なら、先に「ご利用になる」にした上で「ご利用になれる」になる。

 先に「利用できる」にした上で「利用おできになる」にするのは間違い。

 本動詞の「(勉強が)できる」の場合は、可能形の「(勉強が)おできになる」と言えなくはないけど、それは別の話。

「ご利用できる」がヘンな理由はこれでいいだろう。

 いろいろ見てみると、「ご〜できます」の例文として出てくるのは、ほとんどが下記の形。

「この電車にはご乗車できません」

「○○がご利用できます」

「○○はご利用できません」

 うーむ。やっぱり、否定文にはハか、と関係のないことを書いてみる。

 なぜか「この電車にご乗車できます」という文はほとんど出てこない。文法的にはおかしくなくても、現実的には……ってことなんだろう。「この電車は、パスモでご乗車できます」ならありそうだけど(正確には「この電車は、パスモでご乗車になれます」にするべき)。

 慣例で「お/ご」がつきにくい動詞はいくらでもある。

 詳しくは『敬語再入門』のリストを見てほしい。

 同書が何度か例にあげているのは「運転する」。「ご運転する」とは言わないが、「運転いたします」はフツーだろう。「運転させていただきます」だと、用途はかなり限られる。

 ほかには、たとえば「実感する」「重視する」あたりは、「ご」はつきにくいだろう。

 ここからさらに微妙な領域に踏み込む。下記のうちヘンな感じがするのはどれだろう。

「ご利用いただけます」

「ご乗車いただけます」

「ご運転いただけます」

「ご実感いただけます」

「ご重視いただけます」

 個人的な語感では、「運転」「重視」は相当ヘン。あとの3つはアリって気がするが、どうも厳密には問題があるらしい。