蜘蛛の糸

この社会の中には、どうしても理解しあえない、相性の悪い人物というのが確かに存在する。

そういう人たちとは、最低限のコミュニケーションを取るだけで、距離を置いたほうが、互いのためだと思う。

そういう人たちのために努力を注いで気力を消耗するよりも、自分が出来ること、得意なことを伸ばしたほうが絶対に効率がいい。

その、「理解しあえない」相手にも、誰か彼か気の合う友人が存在するだろう。

白津の家に「一桁の足し算が出来ず、自分の名前が書けない」家族がいる。

自分を向上させる努力を一切せず、周りを困惑させてばかりいるが、そんな彼女にも友人が数名確かにいるのだ。

どんな人物にも、探せば友達というものがいるものである。

……はずだった。

でも待ってほしい。

この「気の合わない人とは距離を置く」スタイルを皆が徹底すると、

「どこへ行っても友達がいない」人材はどうしようもない孤独を味わうことになる。

だってそうだろう、身も心も醜い人がいたら、どこへ行っても距離を置かれ、社会的コミュニケーションが一切取れなくなる。

どこにも気の合う人がいない人材は、やがていつか腐り、匂いを放ち、最低な人生を送るのだ。

他の人材と同じ国、同じ町に住んでいながら。見る世界はまるで違うものになる。

白津は、身も心も醜く、行動することが出来ない底辺の人材である。

人間であって人間でない。

幼少期、白津にはともだちがいなかった。

級友(笑)が、前述の「気の合わない人は距離を置く」スタイルでいたからだ。

いつも死のことを考えて、教科書をめくっていたものだ。

家に帰ったら、今度は家族の人形兼奴隷だった。

自分は生きているのか死んでいるのかわからない。

そんな折に、転校生が来た。

髪の長い美少女だった。

顔が真っ赤になってしまった男子もいたくらいである。

そんな美少女がなんと白津にも声を掛けて、友達になったのである。

色んな話をし、色んな場所へ連れてってくれた。

普通だったら在校生が転校生に声を掛けるものなのに。

人生は大きく変わった。

転校生が投げかけた蜘蛛の糸に捕まったことによって、周りの風景に色がついた。

世界がどんどん広がっていった。

こうして現在、息を吐いて吸っていられるのも、彼女のお陰と言っても過言ではない。

相性が合いそうにない人物に引っかからず、自分の為すべきことを達成するのは、確かに賢明で素晴らしい事だろう。

でも、ヘドロみたいな人間を、匂いと泥にまみれながら救い上げることは、前者よりも百倍も千倍も素晴らしい事であるを、忘れてはならない。

そんなことが出来る人材は、選ばれた人材なのだから。

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